[兵庫県・加古川市]
軸足ブレず、流行に惑わされない。
確かなカット技術でお客様の要望に応える
地域の理容室。
studio SSS
オーナースタイリスト石部 晋輔
流行り廃りが激しい時代にあって、
自分はどこに〝軸足〟を置いて
生きていけばいいのだろう━━。
自身の在り方やこれからのキャリアに不安を覚えたのなら、ぜひとも知っておいて欲しい人がいます。兵庫県加古川市、メンズ専門理容室「studio SSS(スタジオ スリーエス)」のオーナースタイリスト石部 晋輔さん。ハサミを手にして18年、「流行りのスタイルに流されず、基礎基本をていねいに」という考えのもと、お客様の要望に合ったヘアスタイルを実現するために愚直に歩んできました。
インタビュー中に語られた、石部さんの基礎基本となるカット技術を軸足としながらもう片方の足でお客様の要望や時代の流れを押さえていく盤石なスタンス。何を大切にすればいいのか、その正解が無い今の時代を生きる私たちにとって、石部さんのお話はきっと道筋を示してくれるものになるはずです。
非日常空間で心地良く。
素敵な理容室タイムを。
兵庫県の播磨地区を東西に貫く国道2号線。小学校やスーパーが立ち並ぶ生活都市圏である加古川市平岡町にオシャレなデザインの理容室があります。「こんにちは!初めまして!」。お店の入り口で明るくチャーミングな笑顔で出迎えてくれるのはオーナースタイリストの石部 晋輔さん。「男性をもっとオシャレに、もっとかっこよく!」をコンセプトに立ち上げられた当店は、2018年創業というまだ若いお店にもかかわらず、30〜40代を中心とした地域の男性に愛され、この道18年で確かなカット技術を持ったオーナーの運営のもと地域男性のオシャレを支えています。
「ありがたいことにお店を構えてからたくさんのお客さんにお越しいただき、今では常連客の方も増えてきました」とはにかむ石部さん。「お店の文化を理解していただき、合った人に長く通って愛していただければ嬉しいですね」。地域からの評判が上々なのを鼻にかける様子は一切無く、「僕はプロの理容師として足を運んでいただいたお客さんの髪を綺麗に整えているだけ」と姿勢は謙虚そのもの。カット中の20〜30分を心地よく過ごしてもらえるようコミュニケーションは積極的にとるようで、「僕自身話好きなので、カット中にお客さんと時事ネタやプライベートなことを話すこともよくあります」とのこと。「カットも顔剃りも日常の延長にあるもの。それを〝理容室〟という非日常空間でどれだけ居心地よく過ごしていただけるかが大事だと思っています」。
〝日常のオシャレ〟。
プロとして求められることはシンプル。
ファッション、美容系というと移り変わりの激しいトレンドを必死に追いかけているイメージを持っていましたが、石部さんのスタンスはそれとはどこか異なります。テレビや雑誌などのマスメディアはもちろん、Instagram、YouTubeなど「劇的な変身をお客様にお届け!」といったメッセージがそこかしこにあふれる今の時代に、石部さんがオーナーをつとめる「studio SSS」は地域の日常に合ったオシャレを提供する理容室としての立ち位置をブラさずに守ってきました。
「『今までは美容室でカットしていたけれど、だんだん美容室が合わなくなってきて』と30~40代の新規のお客様から良く聞きます。日常をオシャレに過ごすための地域の理容室なので、奇抜な髪型や過度な染髪などは行っていません」と石部さんは話します。「僕らの商圏は広くても半径10km~20kmくらい。地元密着のサロンとして日常使いされることを目指しています」。
理容師としてハサミを手にして18年、目を引く流行に流されることなく、基礎基本のカット技術を軸にお客さんと向き合ってきた職人の美意識が言葉の端々ににじみ出ていました。
鍛え上げられた〝軸足〟と
縦横無尽に動き回る〝差し足〟。
基礎基本に忠実な力強い石部さんのスタンスはいったいどのように築かれたのでしょうか。「大阪の専門学校を卒業した後に働いていた理容室は基礎基本のカット技術を非常に大切にしており、僕はその環境で鍛えられました。流行をつかむことはもちろん大事ですが、それらはあくまで派生系であって軸にすることはありません。流行には20年くらいのサイクルがありそれぞれにベースとなる〝型〟があります。基礎基本がしっかりとしていればどのような流行が来ても対応することができます」と石部さん。現在よく見られる〝ツーブロック〟も20年前に一度流行があったそうで、バリカンを入れる、刈り上げる、髪を流すといった基本は大きく変わらないそう。時代の流行を見つつも軸足は動かさずどっしりと構えるスタンスは、仕事の中で磨かれ抜かれてきたものでした。
石部さんは続けて「とはいえ、時代に合わせた取り組みも積極的に行わないといけないな、とも思っています。SNSはその代表ですよね。僕も更新しようと頑張ってはいるのですがなかなか難しくて……」と笑います。「トレンドに強い同業者もそれはそれで一つのやり方です。自分には自分のやり方があるだけで、毛嫌いしたり批判するつもりは全然ありません」。基礎基本によって鍛え上げられた軸足と時代のトレンドをおさえる差し足のバランスは、強い職人意識とこうした新たな流行へのフラットな向き合い方によって支えられているのかもしれません。
確かな技術を持った、
軸足のしっかりとした職人を。
石部さんご自身と「studio SSS」の今後についてお話をうかがってみると、「自分はお店の前に立ってお客さんを案内し、カットは後進に任せていきたい」とのこと。「弟子をとって、次の若い後進を育てていきたいと思っています。僕はお客さんをお出迎えして一言二言お話しして、『ありがとうございました。また来てください』と声をかける。現場を離れるわけではなく、若いスタイリストのサポートをしながら長く働けたら素敵ですね」。
studio SSS